2025年8月30~31日、伊豆大島北部のダイビングスポット(秋の浜・王の浜・野田浜等)でのダイビング記録。
確認できた魚類を中心に、分布・生息環境・確認状況および簡単な同定メモをまとめた。
※ 魚類の標準和名・学名は本村(2025)に従った。
条鰭綱
ウナギ目
ウツボ科
トラウツボ
Enchelycore pardalis (Temminck & Schlegel 1846)

分布
千葉県館山湾〜屋久島の太平洋沿岸,伊豆・小笠原諸島;インド-太平洋沿岸
生息環境
沿岸岩礁域
確認状況
岩礁域の岩陰から姿を現したところを確認。
体色が保護色となっていた。
同定メモ
顎が湾曲しており、口を完全に閉じることができない。
吻端の前鼻孔および眼上の後鼻孔の両方が管状に突出する点が特徴。
伊豆諸島では普通に見られるが、より南方の海域では少ない。
モヨウモンガラドオシ
Myrichthys maculosus (Cuvier 1816)

分布
伊豆半島以南 ~ 高知県;インド・太平洋
生息環境
砂礫底
確認状況
全長70cm近くあり、独特な存在感を放っていた。
同定メモ
ド派手な配色とヒョウ柄模様が特徴的。
小さいものは斑の列が少ない。
ペルカ目
フサカサゴ科 ミノカサゴ亜科
ハナミノカサゴ
Pterois volitans (Linnaeus 1758)

分布
南日本の南太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;東部インド洋 ~ 中・西部太平洋の熱帯域
生息環境
沿岸の岩礁域
同定メモ
ミノカサゴ Pterois lunulata に似るが、体側面の鱗が細かく目立たない点から本種と判断。
棘にタンパク質性の毒がある。
ハタ科
アカハタ
Epinephelus fasciatus (Forsskål 1775)

分布
南日本、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド・太平洋
生息環境
サンゴ礁域、浅所 ~ 深所の岩礁域
同定メモ
背鰭の先端が黒い事でアカハタモドキ E. retouti と区別可能(モドキは赤い)
ヨウジウオ目
ヒメジ科
ホウライヒメジ
Parupeneus ciliatus (Lacepède 1802)

分布
南日本の太平洋岸、兵庫県浜坂、琉球列島;朝鮮半島、インド・太平洋
生息環境
岩礁域やサンゴ礁域浅所
同定メモ
オキナヒメジ P. spilurus に似るが、本種は尾柄部の暗色斑は鞍状で側線のやや下まで伸びることで見分けられる。
(オキナヒメジは、尾柄の黒い班紋が丸く側線にかからない)
サンフィッシュ目
タカノハダイ科
ミギマキ
Goniistius zebra (Döderlein 1883)

分布
分布/南日本の太平洋岸,琉球列島;台湾
環境
浅海の海藻が生える岩礁に棲息
同定メモ
ユウダチタカノハ G. quadricornis に似るが、本種は唇が赤い点が特徴。主に小型底生動物を食す。
タカノハダイ
Goniistius zonatus (Cuvier 1830)

分布
南日本,琉球列島;朝鮮半島,中国,台湾
環境
浅海の岩礁域に生息、本州沿岸でごく普通。
同定メモ
幼魚は尾鰭に白斑がなく、流れ藻につく。主に小型底生動物を食す。
ベラ目
ベラ科ブダイ亜科ブダイ族
ブダイ
Calotomus japonicus (Valenciennes 1840)


分布
隠岐諸島,南日本の太平洋岸,琉球列島.小笠原諸島,小笠原諸島;朝鮮半島,中国
環境
岩礁域に生息し、ガラ藻場やガレ場に見られる。10m以浅に多い。伊豆では普通種。
確認状況
昼は活発に活動し、ナイトダイブでは岩陰で休んでいる様子が観察できた。
同定メモ
ブダイ科は青や黄色を基調とする種が多い中、本種は赤みを帯びた体色が特徴。
成魚は30cmを超え、体高もあり、実際に見るとかなりの存在感がある。
ちなみに、漢字では「不鯛、武鯛、醜鯛、舞鯛」などの字を当てる。
その由来は、
- 不細工であるから「不鯛」・「醜鯛」
- 武士のように強く勇ましそうな様子から「武鯛」
- 水の中で舞うように遊泳する様子から「舞鯛」
とされているようである。
ギンポ目
イソギンポ科
ニジギンポ
Petroscirtes breviceps (Valenciennes 1836)

分布
南日本,伊豆・小笠原諸島,琉球列島;朝鮮半島,インド・西太平洋
環境
岩礁域サンゴ礁域に生息し、浅所の藻場に見られる。普通種。
同定メモ
1本の暗色縦帯と頭部の斑が特徴。
イヌギンポP. variabilisによく似るが、イヌギンポの項部に皮弁があるのに対し、本種にはそれがない。
遊泳性であるが、巻貝の貝殻や岩穴、パイプなどの円筒状の構造物に産卵し卵を守る。
フグ目
ハコフグ科
ウミスズメ
Lactoria diaphana (Bloch & Schneider 1801)

分布
函館,青森県今別・牛滝,青森県-種子島の太平洋沿岸、伊豆・小笠原諸島,琉球列島:インド-汎太平洋,大西洋南東部
環境
岩礁-砂地の境界付近の水深5-30mに見られる。
同定メモ
魚の方のウミスズメで、ややこしいが海鳥(チドリ目ウミスズメ科)に同音異種のウミスズメ Synthliboramphus antiquus がいる。
コンゴウフグL. cornuta (Linnaeus 1758)と比べ尾鰭が丸くて小さく、シマウミスズメ L. fornasini (Bianconi 1846)には青い斑紋があることで識別可能。求愛時には雄が雌をつつく。
腹足綱
ドーリス目
ミカドウミウシ科
ミカドウミウシ
Hexabranchus sp.


分布
インド-西部太平洋熱帯域
行動・生態
外套膜を波打たせて遊泳する。
外套膜は通常、背面内側に巻いているが、刺激を与えると大きく広げる「フラッシング」という行動をとる(図.11(2))。フラッシングには、敵を威嚇する目的があると考えられている。
同定メモ
体長600mmに及ぶ大型のウミウシ。1科1属1種とされていたが、近年5種に分かれた。
背面には赤色と白色の不定型な斑紋が入ることからH. lacer (Cuvier, 1804)と思われるが、厳密な同定には遺伝子解析が必要。
初めてのナイトダイビング、そして次の目標
今回の伊豆大島では、初めてナイトダイビングを体験した。
ライトの光だけを頼りに進む夜の海は、昼間とはまったく異なる世界だった。昼間に見かけた魚たちも、眠っていたり、物陰に身を潜めていたりと、その行動は大きく異なる。時間帯によって生きものの姿や過ごし方が変わることを、実際に潜って観察できたのは非常に興味深かった。
一方、早朝の海では、ハンマーヘッドシャークことアカシュモクザメを狙うダイビングも行われた。ただし、当時の私は参加条件となる経験本数を満たしておらず、今回は参加を見送ることになった。
その早朝ダイビングに参加した同行者は、実際にハンマーを見ることができたという。うらやましく思うと同時に、「次こそは自分も」と、リベンジを誓った。
これから少しずつ経験を重ね、いずれ改めて伊豆大島の海でハンマーに挑戦したい。
参考文献
- 木村義志・瀬能 宏(監修).2018.山溪ハンディ図鑑 改訂版 日本の海水魚.山と溪谷社.
- 本村浩之.2025.日本産魚類全種目録―これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名―.Online ver. 35.https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/staff/motomura/jaf.html.
- 環境省.2017.海洋生物レッドリスト(2017)【魚類】.環境省.
- ぼうずコンニャク株式会社.ブダイ.市場魚貝類図鑑.https://www.zukan-bouz.com/syu/ブダイ(参照:2026年8月9日).
- Tibiriçá, Y., Pola, M., Pittman, C., Gosliner, T. M., Malaquias, M. A. & Cervera, J. L. 2023. A Spanish dancer? No! A troupe of dancers: a review of the family Hexabranchidae Bergh, 1891 (Gastropoda, Heterobranchia, Nudibranchia). Organisms Diversity & Evolution, 23(4): 697–742. https://doi.org/10.1007/s13127-023-00611-0
- 小野篤司・加藤昌一.2020.新版 ウミウシ―特徴がひと目でわかる図解付き.ネイチャーウォッチングガイドブック.誠文堂新光社,東京,p.48
- 中野理枝.2019.日本のウミウシ 第2版.ネイチャーガイド.文一総合出版,東京,pp.189, 398.

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