【観察記録】ナガレタゴガエル・タゴガエル・ヒガシヒダサンショウウオ(2025年2月11日@関東某所)

今回は、関東某所でタゴガエル、ナガレタゴガエル、ヒガシヒダサンショウウオの3種を観察したため、下記のとおり紹介します。

目次

無尾目 アカガエル科

タゴガエル Rana tagoi

本州、四国、九州に分布する日本固有種。

繁殖期は3~6月だが、同一地域で産卵期の異なる2集団が確認されている。

繁殖期に雄は岩の隙間や苔下で鳴き、雌は渓流沿いの伏流水や、沢の岩や落ち葉の下などで産卵する。

同属のニホンアカガエル・ヤマアカガエルとは、下顎から喉にかけての斑紋で識別が可能である。

各都道府県のレッドデータブックおよびレッドリストでは、1都12県で掲載されている(2025年4月29日現在)。

今回、次に紹介するナガレタゴガエルRana sakuraiiとは異なる地点で確認され、同所的には見られなかった。

図1. 確認されたタゴガエルの成体
図.2 タゴガエル・ヒガシヒダサンショウウオの生息環境

ナガレタゴガエル Rana sakuraii

関東地方から山陰地方に生息する日本固有種。

同属近縁のタゴガエルRana tagoiと比べ、後肢の水かきが非常に発達していることが特徴(図5)。

繁殖期には、谷川の澄んだ淀みや淵に集まる(図4)。

また、秋ごろから繁殖期の2-4月まで岩下で越冬する。これにより脇下の皮膚がたるみ、木の葉状となる(図3-a)。
この皮膚のたるみは、体表面積を増加させ、水中での呼吸を補助する役割をもつ。

愛知県、岡山県の指定希少動植物種に指定されているほか、1都22県でレッドデータブックおよびレッドリストに掲載されている(2025年4月29日現在)。

当地点では写真の個体を含め、4個体が確認されたが、いずれも婚姻瘤のある雄であった。

図3-a. ナガレタゴガエル(♂:赤褐色味の強い個体)
図3-b. ナガレタゴガエル(♂:斑紋のある個体)
図4. ナガレタゴガエルの生息環境

タゴガエルとナガレタゴガエルの後肢の水かきによる判別

先述のとおり、ナガレタゴガエルR. sakuraiiはタゴガエルR. tagoiに比べ、水かきがよく発達する(図5)。

(a)タゴガエル
(b)ナガレタゴガエル

図5. タゴガエル(a)とナガレタゴガエル(b) の左後肢の水かきの比較

図5-a. タゴガエルの左後肢の水かき
nagaretagogaeru
図5-b. ナガレタゴガエルの左後肢の水かき

有尾目 サンショウウオ科

ヒガシヒダサンショウウオ Hynobius fossigenus

関東地方西部~愛知県北東部に生息する、日本固有の流水性サンショウウオ。

本種は、2018年にヒダサンショウウオHynobius kimuraeから分かれ新種記載された。

標高200-1,000m付近に多く生息し、2上旬-3月下旬に繁殖最盛期を迎え、渓流の源流域に集まる(図2)。

環境相レッドリスト2020で絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されているほか、群馬、東京、静岡、愛知の4県のレッドデータブックおよびレッドリストに登録されている(群馬:絶滅危惧IA類(CR)、東京:VU、静岡:VU、愛知:準絶滅危惧(NT))。

今回、確認された成体2個体は、同一の岩のしたから確認され、一方は卵が透けて見えていた(図7-b)。

また、幼生については10個体を超える個体が確認された(図8)。

なお、タゴガエルR.tagoiとは同じ沢沿いで確認された。

図.6 確認されたヒガシヒダサンショウウオの成体
図7-a. 同一の岩下から確認されたペアとみられる成体(一方は図6と同一個体)
図7-b. 同一の岩下から確認されたペアとみられる成体(一方は図6と同一個体)
図8. ヒガシヒダサンショウウオの幼生

参考文献

  • 関慎太郎, 2021, 野外観察のための日本産両生類図鑑  第3版, 緑書房, 東京
  • 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎, 2002, 決定版日本の爬虫両生類, 平凡社, 東京
  • 草野保・植田健仁・初芝伸吾, 2001. 東京都におけるヒダサンショウウオとハコネサンショウウオの生息分布. 爬虫両棲類学会報 2001(1):1-7.
  • Okamiya, H., Sugawara, H., Nagano, M., & Poyarkov, N. A. 2018. An integrative taxonomic analysis reveals a new species of lotic Hynobius salamander from Japan. PeerJ, 6(6), e5084-40. http://doi.org/10.7717/peerj.5084
  • 群馬県, 2022, 群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2022年改訂版)動物レッドリスト
  • 東京都, 2024, 東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2020年見直し版
  • 静岡県版レッドリスト , 2020 .
  • レッドデータブックあいち2020 , 2020.
  • NPO法人 野生生物調査協会とNPO法人 Envision環境保全事務所, 日本のレッドデータ検索システム, (http://jpnrdb.com/database/species/search/)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次